エネがえるBiz - 蓄電池の数値設定方法TIPS

産業用蓄電池を「ピークカット(シフト)」メインで使うか、「自家消費最大化」目的で使うかなどケース別の充放電の時間帯の設定方法などTIPSを参照いただけます。以下ご参照ください。

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対応者:樋口 悟
今週アップデートされました

■蓄電池シミュレーションに関する基本事項

・蓄電池シミュレーションは、原則として次のような動きとなります。ただし、充放電量は 実効容量、充放電の定格、その時の残量により制限されます。

・買電量が目標ピーク値を超えないよう、蓄電池の放電で補います(ピークシフト)。このピークシフトは放電時間の設定によらず、充電時間帯以外であれば行います。ピークシフトを目的とする場合を想定して、買電量を "目標ピーク値(デマンド)" に抑えるように放電を行うシミュレーションをしています。


・(例)目標ピーク値を 80kW に設定した場合:次のように買電量の超過部分を蓄電池の放電で補い、放電した分だけ再度充電を行い、満充電にして待機する、といったシミュレーションになります。(初期設定値は、放電開始と終了が同じ値、"翌日の余剰太陽光を前提に・・・" がOFFになっています。=ピークシフト以外の充放電なし)


・放電時間帯は目標ピーク値によらず放電を行います。


・余剰太陽光がある場合は蓄電池に充電します。


・充電時間帯は目標ピーク値を超えない範囲で充電を行います。 ("翌日の余剰太陽光発電を前提に系統充電を減らす" オプションが指定されている場合は、充電量が調整されます。 ただし、実際にこのような動きをするためには翌日の状況に合わせて蓄電池を制御する仕組みが必要になります。)


・放電開始と放電終了に 0以外の同じ値を指定した場合は、ピークシフト以外の放電を行いません。 (両方 0 の場合は、充電時間帯以外は常時放電します)


・充電開始と充電終了に 0以外の同じ値を指定した場合は、系統からの充電を行いません。 (両方 0 の場合は、放電または太陽光充電がなければ、目標ピーク値を超えない範囲で系統から常時充電します。 この場合、”翌日の余剰太陽光蓄電を前提に系統充電を減らす" オプションは指定できません。)


・蓄電池シミュレーションの結果、ピーク値を超える使用量を蓄電池からの放電で補うことで、買電量のピーク値が設定した値で抑えられているかどうかを確認できます。


・ただし、これはあくまでも入力または計算した電気使用量および太陽光発電量前提のシミュレーションであって、実際の値は異なってきますので、 必ずしも目標ピーク値を維持できるとは限りません。ご注意ください。


・診断レポートで出てくる実効容量:入力の例 200kWh(1日の充放電に使う量)+放電深度orBCPバックアップ用を加えた量:50kWh(貴社設計)= 必要な蓄電システムの定格容量:250kWh。

・系統充電なし(太陽光の蓄電を優先)


・蓄電池シミュレーションの先頭にある "系統充電なし(太陽光の蓄電池充電を優先)" のオプションを選択すると太陽光をピークカットおよび蓄電に優先して使用し、 残りを自家消費する形のシミュレーションになります。


・通常のシミュレーションは太陽光自家消費シミュレーションの結果に対して、蓄電池を加えたシミュレーションとなっています。


・つまり、太陽光を自家消費した上で その余剰を蓄電しています(左図)。一方、こちらのオプションを選択した場合は、太陽光をピークカットおよび蓄電に優先して使用するシミュレーションとなります(右図)。


・黄色の部分が太陽光からの蓄電です。例えば上図の 7-8時で自家消費していたものを、ピークカットに備えるために蓄電する形になります。 9-13時では太陽光をピークカットのみに使用し、残りを蓄電しています。


・なお、"蓄電池選定のための参考値" で算出した目標ピーク値は系統充電で満充電にすることを前提に計算しています。


・ したがってこのオプションを選択した場合は目標ピーク値を維持できない可能性が高くなります。必ず超過買電量を確認して目標ピーク値を調整ください。

・余剰太陽光の最大値

-1日合計の最大が蓄電池の実効容量(kWh)の参考値

-1時間の最大が充電容量(kW)の参考値

※使用量の低い日が連続するなど、放電が十分に行われない場合は、実効容量が不足するケースが発生する

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❶充電時間の設定

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➀0時~0時:放電または太陽光充電がなければ、目標ピーク値を超えない範囲で系統から常時充電する。

-充放電をこまめに行うと、一度に蓄電池に貯めておく必要がなくなるので、実効容量を少なくすることもできる。

-充電時間を0時~0時に設定した場合は、”翌日の余剰太陽光蓄電を前提に系統充電を減らす”オプションは指定できない。充電できるときに充電してピークに備えておく、という動きになるため。


★自家消費率を最大化したい場合におすすめ

➁20時~20時(0以外の同時間を指定):系統充電なし(自家消費>蓄電の優先順位)

★系統充電→ピークシフト(カット)で電気代削減を最大化したい場合におすすめ

③21時~5時(深夜電力の時間帯を指定):系統充電あり(深夜電力)


★ストレージパリティ補助金使うときにオススメ(系統からの充電NGのケースなど)

④"系統充電なし(太陽光の蓄電を優先)" オプションを選択する:
ピークカット>蓄電>自家消費 の優先順位

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❷放電時間の設定

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★自家消費率を最大化したい場合にオススメ
➀0時~0時:充電時間帯以外は常時放電する(蓄電池からの放電量を最大化=自家消費率UPにしたい ※ただし時間帯によって目標ピーク値を満たせず基本料金削減効果が落ちる場合あり)


★最大デマンド削減したい場合にオススメ

➁20時~20時:ピークシフト以外の放電を行わない(電気代削減率を最大にしたい=最大デマンド削減したい)


★最大デマンド削減したい場合にオススメ

③9時~18時:その時間帯は目標ピーク値に関わらず、放電する

※日中の使用量差が少なく(ピークシフトが重要ではない)、太陽光余剰を有効利用して自家消費率を上げたいような場合、放電時間を調整すると太陽光余剰電力からの充電量が増えて自家消費率が上がる。

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●パターン別の最適設定

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❶ピークあり:日中の使用量差が大きい
・ピークシフトにより最大デマンド値の削減効果が見込める場合:エネがえるBizでいうと目標ピーク値が重要なシーン→系統充電なしオプションをONにする。

❷ピークなし:日中の使用量差が小さい

・ピークシフトが重要ではない。太陽光余剰を使った充放電を最大化して自家消費率を上げたい場合

→系統充電なしオプションをOFFにする。放電時間0時-0時→充電時間帯以外は常時放電する(蓄電池からの放電量を最大化したい

※ただし時間帯によって目標ピーク値を満たせず基本料金削減効果が落ちる場合あり) / 充電時間21時-21時にする→系統充電なし(自家消費>蓄電の優先順位)

❸月別にばらつきがある

・例:夏季7月・8月はピークあり:昼間の使用量が突出して高い=余剰電力が出ない。それ以外の月は大きなピークがなく、低い使用量で安定=余剰電力が多い

→<課題1>電気の基本料金を抑えるために、PV導入後のピーク(123.3kW) を 94kWに抑えるように蓄電池シミュレーションを行うと、電気料金削減率は 22.8 →30.6 %にアップするものの、7, 8月以外の月はピークシフトの必要がないため、太陽光の余剰があっても蓄電池がほとんど活用されない

→<課題2>太陽光余剰を最大限に活用して自家消費率を上げようと、放電時間を最大限に設定し、系統からの充電をしない設定でシミュレーションすると、自家消費率は 31.9 → 41.9% にアップしますが、今度は買電量のピーク値が目標ピーク値を超えてしまい、電気料金削減率も前のケースよりも下がっています。(今回、時間帯別ではない料金プランでシミュレーションしているため、系統からの充電をしないように設定していますが、もし時間帯別の料金プランであれば、系統からの充電時間を設定して、夜間の安い電力を活用することで、目標ピーク値を超過しても電気料金削減率自体は向上することがあります。)

→特定月の蓄電池設定を使う。

A:夏季のピークありの7月・8月:放電時間:21時-21時 / 充電時間21時-5時 / チェックボックスON

※月ごとの使用状況によって、蓄電池の充放電設定を変えることで、より高い効果を出すことができる場合がある

■想定する蓄電池の仕様から目標ピーク値を計算

・太陽光の自家消費シミュレーションの際、使用予定の蓄電池の仕様から、ピークシフトによってどの程度のピーク値まで下げることができるかを計算するようにしました。

・実効容量:180kWh, 放電容量:25kW, 放電の変換効率:98% の蓄電池の場合、現在の買電量ピーク値(最大):94.7 kW を 69kWまで下げることができます。(目標ピーク値の超過買電量の最大が 合計: 151.25kWh, 時間あたり: 24.02 kW であり、蓄電池の実効容量×変換効率 および 放電容量の範囲内です。目標ピーク値を 68kWにするとこの範囲を超えてしまいます。)

・ もう少し汎用的な表現に言い換えるとすると、「蓄電池のピークシフトにより、最大で 514,800 円/年 = 1716円/kW・月 x 25kW x 12 (基本料金単価 x 放電容量) の削減が見込めます。ただし、1日のピークシフト可能な電力量の最大は 176.4kWh = 180kWh x 0.98 (実効容量 x 変換効率) で、それを超える場合はその限りではありません。」 といった表現になるかと思います。

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