産業用自家消費型太陽光と蓄電池の最適な容量を推計するためには、需要家の目的やゴール(電気代削減額が最大になればいくらでも投資できるのか?自家消費率が高まりCO2排出量削減が最大になればいくらでも投資できるのか?それとも投資回収期間や投資予算等に上限がありその中で設備容量を抑える必要があるのか?そもそも設備の負荷や需要カーブはどのような特性があるのか?)といったような要件を整理しつつ、いくつかの要素を考慮する必要があります。
例えば、消費電力のパターン、太陽光発電の量(場所と季節による)、そして目的(ピークカットか自家消費の最大化か)などです。
以下に、それぞれのシナリオについての一般的な考え方と計算式を示します。
●最適な太陽光パネル容量の求め方
非FITの自家消費型太陽光案件の場合、設備負荷と設置する太陽光パネル・パワコン容量とのバランスで逆潮せずに捨てる余剰電力を必要最小限にできるか?といった考え方がシンプルに最適容量を求める一つのやり方となります。
唯一の答えはありませんが、一般的には、年間の太陽光余剰電力の余剰率が5-10%程度に収まる程度の太陽光パネル容量・パワコン容量が目安になります。
※ただし、蓄電池併設が前提の場合でもっとパネルが載せられる屋根面積を持つ施設の場合は、上記の5-10%より意図的に太陽光パネル・パワコン容量を増やした設計にするケースもあると思います。
※注意:太陽光発電の効率について:
太陽光発電の効率は、パネルの種類や品質、設置条件(向きや傾斜、遮蔽物の有無)、環境条件(温度、雲量、日照時間)などによって大きく異なります。これらの要素は太陽光パネルメーカーと確認いただき、具体的に考慮に入れることで、より精度の高い容量計算が可能になります。
現状エネがえるBizでは太陽光モジュールごとの特性の違いは、太陽光シミュレーションの入力項目にある基本設計係数(エネがえるBizの初期値0.85で設定)で可変できるようにしています。例えば最新の高効率のモジュールの場合0.85を0.9程度にしていただくと発電量が近似値になるケースが多いです。ただし、発電量シミュレーションをある程度保守的に見積もるためにエネがえるBizの基本設計係数は0.85を初期値にしています。
●最適な蓄電池の容量の求め方
あくまでも一般的な考え方です。詳細は産業用蓄電池メーカーの担当者などと相談して需要家に合わせてご提案ください。
1. ピークありのピークカット重視(最大デマンド値を下げることにより基本料金削減)の場合:
この場合、ピーク電力消費時に使用する電力の量を削減することを目的としています。そのため、このピーク電力を蓄電池がカバーできるように、蓄電池の容量を設定する必要があります。ピーク電力消費時間の間に充電できる太陽光発電の量も考慮に入れます。
蓄電池の最適な容量は以下のように計算できます(あくまでも簡易な計算):
蓄電池の容量(kWh) = ピーク電力(kW) × ピーク持続時間(h) - 太陽光発電の量(kWh)
※より正確には、蓄電池の変換効率等も加味して、以下とするのがベターです。
蓄電池の容量(kWh) = (ピーク電力(kW) × ピーク持続時間(h)」 ) - 太陽光発電の量(kWh))/蓄電池の効率
この場合の太陽光発電の最適な容量は、ピーク電力消費時間中に充電できる最大の量を目指します。これは日照時間と太陽光発電の効率によります。
ピークカットを重視する場合、最大デマンド値をどの程度カットするかの数値を設定し、産業用蓄電池の最適容量・出力を推計します。
この場合、考慮する要素は「開始時」「終了時」「最大デマンド値=ピーク値」です。
たとえば、「5時から21時の間のデマンドを80kWでピークカットする」という設定が可能です。
最大デマンド値=ピークを目標ピーク値で抑えるためには超過している部分を蓄電池の放電でまかなう必要があります。この超過買電量の合計が蓄電池に必要な実効容量(kWh)になります。また、時間単位の超過買電量の最大が必要な定格出力(kW)の目安となります。
2. ピークなしの自家消費重視(太陽光発電による余剰電力を蓄電し自家消費率アップ)の場合:
この場合、できるだけ多くの電力を自家消費することを目的としています。そのため、日々の電力消費量に対して、太陽光発電と蓄電池の組み合わせで対応できるようにする必要があります。
蓄電池の最適な容量は以下のように計算できます:
蓄電池の容量(kWh) = 一日の消費電力(kWh) - 一日の太陽光発電の量(kWh)
この場合の太陽光発電の最適な容量は、一日の電力消費量をできるだけカバーできるように設定します。これも日照時間と太陽光発電の効率によります。
以上の計算式は一般的なもので、具体的な状況によっては適応する必要があります。
自家消費を重視する場合、太陽光発電量と電気使用量の関係を考慮して、太陽光設備の容量を選定します。蓄電池を導入しているのであれば、発電量が電力使用量を上回った場合(余剰電力量が多く余剰率が10%以上)だとしても、その余剰電力を蓄電システムで保存し、後で使用することができます。
適正容量を検討するにあたっては、太陽光発電量が多い場合だけでなく、少ない場合を想定したシミュレーションも実施します。さまざまな想定をした上で、電気使用量の傾向により適切な容量を見極めていきます。
また、設備容量によっても導入コストが変わってきますので、最終的にはコストも踏まえた上で適正容量を提案します。
※注意:蓄電池の効率と寿命について
蓄電池の効率(充電・放電効率)と寿命(サイクル数)も重要な要素であり、これらも最適な容量の計算に影響を与えます。蓄電池の効率は、充電と放電の間に一部のエネルギーが損失するため、蓄電池の容量をただ計算するだけでなく、効率を考慮した計算も必要です。また、蓄電池の寿命は使用頻度と深度(どの程度充電・放電を行うか)によって左右され、これも考慮に入れるべきです。
ただし現状エネがえるBizでは蓄電池の経年劣化等はシミュレーションに考慮していません。
●エネがえるBizを使って試行錯誤しながら最適容量を探る
需要家の目的や許容予算や許容されるROI、設備負荷の特性、契約電力の単価や料金プランなどによって、「なにが最適か?」は変わるため、エネがえるBizでピンポイントで最適容量を計算することはできませんが、上記のような考え方を参考にしつつ、エネがえるBizを使って、太陽光発電の最適容量(※一般的には、年間余剰率が5-10%の範囲内で、かつ屋根面積に収まる範囲であれば適正な容量と考えられます)や蓄電池の最適容量を削減できる最大デマンド値などを参考にしつつ試行錯誤で探ることが可能になっています。
詳しくは以下オンラインマニュアルをご参照ください。
太陽光自家消費シミュレーション - エネがえるBiz マニュアル
https://www-biz.enegaeru.com/manual/step/pv.html
蓄電池シミュレーション - エネがえるBiz マニュアル
●経済性の評価について
太陽光発電や蓄電池の導入には高額な初期投資が必要です。そのため、電気料金の削減だけでなく、設備の導入コストや運用・保守コスト、そして設備の寿命を考慮した上で、経済性を評価することが重要です。具体的には、規模が小規模・中規模程度であれば、簡易な投資回収期間(ROI)で十分です。大規模でファイナンスも絡む場合は、内部収益率(IRR)などを使っても良いでしょう。