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家庭用太陽光発電システム見積もりの作り方は?

家庭用太陽光発電システムの見積書作成の基本と手順を、実務レベルで即使えるように俯瞰→分解→比較で体系化しています。ご参照ください。

樋口 悟 avatar
対応者:樋口 悟
昨日アップデートされました

以下は、家庭用太陽光発電システムの見積書作成の基本と手順を、実務レベルで即使えるように俯瞰→分解→比較で体系化したものです。
実務で必要となる“抜け漏れ防止チェックリスト”としてもそのまま利用できます。


1. 全体フロー(俯瞰)

家庭用太陽光の見積書作成は、以下5ステップに分解できます。

  1. 顧客条件・屋根条件の取得

  2. システム設計(容量・構成)

  3. 機器・工事費の積算

  4. 補助金・電気代・売電単価を加味した効果算定

  5. 見積書・提案書の作成

これらは、①入力 → ②設計→ ③積算 → ④経済効果 → ⑤出力(見積/提案)という構造で、
各ステップが一つ欠けると提案の信頼性・成約率に直結して低下します。


2. ステップ別の詳細プロセス(分解)

■ ステップ1:顧客条件・屋根条件の取得

見積精度の80%がここで決まります。

▼ 必須ヒアリング項目

(建物情報)

  • 屋根材:スレート/瓦/金属

  • 屋根方位:南 or 東西混在 or 北面

  • 屋根形状:切妻/寄棟/陸屋根

  • 屋根面積:使用可能面積(窓・天窓・障害物)

  • 築年数:10年以上の場合は補強の可能性

  • 雪対策地域か(豪雪地帯か否か)

(生活パターン・電気)

  • 世帯人数

  • 日中在宅率(自家消費率に大きく影響)

  • 電気代:直近12カ月の電気代(毎月 or 平均)

  • 契約種別:従量電灯B/C、スマートライフ、オール電化か

(その他)

  • 蓄電池・V2Hの設置意向

  • 停電対策の重視度

  • 車の所有台数(将来のEV導入想定)


■ ステップ2:太陽光システム設計(容量・枚数)

▼ 容量の考え方

  • 屋根面積から最大搭載量を逆算

  • 方位・傾斜に応じて**発電係数(南100% / 東西90〜93%)**を調整

▼ 設計フロー

  1. 使用可能屋根面積を確定

  2. モジュールの種類・寸法から枚数を算定

  3. パワコン容量(DC/AC比)を調整

  4. 配線ルート・接続箱の要否を判断

  5. 影(煙突・庇・アンテナ)によるロスを考慮


■ ステップ3:機器費・工事費の積算

家庭用太陽光は総額150〜250万円が相場(5kW前後)。
※実際の見積は以下を積上げ方式で作成します。

▼ 見積項目の標準構成

(機器)

  • モジュール(型式、枚数、単価)

  • パワーコンディショナー

  • 接続箱

  • 架台

  • ケーブル一式

  • 発電モニター/HEMS

(工事)

  • 基本設置工事費(屋根材ごとに単価が違う)

  • 電気工事費

  • 架台工事費

  • 足場設置費

  • 申請代行費(電力会社、経産省)

(その他)

  • 諸経費(3〜10%)

  • 保証費用(メーカー保証、自然災害補償など)


■ ステップ4:補助金・電気代・売電単価を加味した効果算定

ここは顧客の意思決定に最も影響するパート。

▼ 電気料金

  • 自家消費の削減分

  • 余剰売電(FIT or 相対)

  • 燃調・再エネ賦課金・基本料金・最低料金

  • 電気代上昇率(デフォルト1〜3%)

▼ 効果算定に必要なデータ

  • 年間発電量(kWh/kW・地域補正)
    → NEDO METPV-20、太陽光発電協会データ

  • 自家消費率(在宅率・オール電化で変動)

  • 売電単価(FIT, 自家消費余剰、相対売電)

  • メンテ費・故障リスク

  • 補助金(東京都/自治体)

▼ 出すべき指標

  • 年間削減額

  • 年間売電収入

  • 設置総額との差分

  • 投資回収期間(年)

  • 内部収益率(IRR)

  • 停電時のレジリエンス価値(特に蓄電池併設時)


■ ステップ5:見積書/提案書の作成

見積書は「数字の羅列」では売れません。
“お客様の生活のどこが良くなるのか”を視覚化することが決定打になります。

▼ 見積書に必ず含める要素

  1. 総額(税込)

  2. 太陽光容量、枚数、機器構成

  3. 工事含む内訳と単価

  4. 補助金適用後の実質負担額

  5. 年間メリット・投資回収年数

  6. 保証内容(メーカー/自然災害)

  7. 工事期間・支払い条件

  8. 追加費用が発生する条件(屋根補強、分電盤交換など)


3. 「良い見積」と「悪い見積」の比較(比較)

項目

良い見積

悪い見積

顧客条件

電気代12カ月取得・屋根寸法を確認

平均電気代のみで設計

設計精度

屋根図面ベースの枚数算定

ざっくり搭載量で見積

積算

内訳が明確・数量と単価が記載

「一式表記」が多い

補助金

条件・交付確度まで記載

金額だけ記載

効果

IRR、回収年数、20年累積効果

年間メリットのみ

リスク提示

追加費用条件・劣化率・影ロス

都合の悪い情報が曖昧


4. 最終アウトプットのテンプレート(実務で使える書式)

■ 見積書の基本フォーマット例

【見積金額(税込)】 
総額:¥1,980,000 (東京都補助金:▲¥210,000、実質負担:¥1,770,000)

【システム仕様】
・太陽光:5.0kW(400W×12枚)
・パワーコンディショナー:5.5kW
・設置方位:南面/傾斜30度
・予測発電量:6,200kWh/年

【工事費内訳】
・モジュール本体:¥840,000
・パワコン:¥210,000
・架台:¥110,000
・電気工事費:¥260,000
・足場:¥150,000
・申請代行:¥70,000
・諸経費:¥120,000

【期待メリット】
・自家消費削減額:¥84,000/年
・売電収入:¥42,000/年
・年間総メリット:¥126,000/年
・投資回収年数:14.0年

5. プロが意識する「成約率を高める要点」

  • 最初の5分で顧客の電気代データ(検針票)を確保する

  • 設計案はA案(最大)・B案(現実)・C案(予算優先)の3案出す

    ※蓄電池セット有無、EV・V2Hセット有無を含めて比較パターンを提示するとお客様は意思決定しやすくなる(投資回収期間は太陽光のみが最短。ただし長期累積の電気代削減メリットは蓄電池セットが最大になる。どちらが意向に沿っているか?などの比較軸を提示)

  • 効果は月別グラフで提示(年間平均だけでは弱い)

  • 停電時の利用可能家電(時間付き)を必ず入れる

  • 補助金は“確度”で説明(採択/抽選/先着)

  • 「電気代上昇率など将来予測」を入れると顧客は前向きになる(今回は、電気代上昇率0%、2%、4%の楽観・通常・悲観の3パターンでご提案します。最悪年4%電気代が上昇すると35年で垂れ流しになる電気代は1,000万円を超えます・・のように)


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