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【共通】エネがえるの太陽光発電量推計ロジック・計算式においてJIS基本設計係数0.85(初期値)の根拠は?

エネがえるの基本設計係数初期値0.85は、JIS C 8907の公的な保守推計で採用される0.76前後と、近年の高効率機器を前提としたメーカー実勢値0.92前後の中間に位置する、実務上妥当な高すぎず低すぎないシミュレーション前提として高すぎず低すぎない初期値として設定しています。またユーザー側で案件毎・試算毎に変更可能な可変の数値となりますので、案件に応じて数値を上げ下げしてください。詳細は以下をご参照ください。

対応者:樋口 悟
今日アップデートされました

1. JIS C 8907(太陽光発電システムの発電電力量推定方法)における総合設計係数・基本設計係数・損失係数の違い

基本設計係数

JIS C 8907では、基本設計係数は「総合設計係数から温度補正係数を除いた係数」と定義されています。つまり、日射変動、経時変化、配線・回路損失、負荷整合損失、インバータ効率など、温度以外のシステム損失をまとめた性能係数です。JIS本文上は、
基本設計係数 = 総合設計係数 ÷ 温度補正係数
です。

総合設計係数

総合設計係数は、基本設計係数に温度補正係数を掛けたものです。環境省の再エネ導入ポテンシャル調査でも、
K = K’ × KPT
として月別総合設計係数を算定しています。つまり総合設計係数は、基本設計係数に加え、季節・設置方式・気温による温度影響まで織り込んだ係数です。


損失係数

「損失係数」はJISの正式な主用語というより、実務上の説明語です。一般には、
損失係数 = 1 − 設計係数
のように説明するとわかりやすいです。
たとえば基本設計係数0.85なら、温度以外の損失を合計で約15%見込んでいるという意味になります。基本設計係数0.76なら損失は約24%、0.90なら約10%です。これは「良い・悪い」ではなく、どこまで保守的に置くか、どの実機性能を反映するかの違いです。JISも、基本設計係数を単一値で与えるのではなく、日射量変動、経時変化、アレイ負荷整合、アレイ回路、インバータ効率などの構成要素に分けて扱っています。


2. 基本設計係数0.756(JIS推奨値) / 0.85(エネがえる初期値) / 0.90(高効率モジュールメーカー実勢値) の違いは何か

・基本設計係数0.756

0.756は、公的資料で見られる保守的・簡便的な代表値です。
環境省SHIFTの太陽光導入ガイドでは、参考値として
0.97(日射量変動)× 0.95(経時変化)× 0.97(アレイ回路)× 0.94(負荷整合)× 0.90(インバータ効率)
を用い、基本設計係数 K’ = 0.756 としています。

また、北海道森町の調査資料でも、JIS C 8907参照のもとで、基本設計係数 K’=0.76 を採用しています。つまり0.76は、官公庁・自治体系の簡便推計や保守的な公共用途で通りやすい水準と言えます。


・基本設計係数0.85

0.85は、0.76ほど保守的ではなく、近年の実務・設備性能をある程度織り込んだ中庸値として理解するのが自然です。
東京都の「東京ソーラー屋根台帳」では、年間発電量推定において総合設計係数 KPY = 0.85 を採用しています。ここでの0.85は基本設計係数ではなく総合設計係数ですが、少なくとも東京都レベルの公的推計で0.85級の係数が採用されていることは事実です。

また、環境省の令和3年度再エネ導入ポテンシャル調査では、建物系で
K’ = 0.97 × 0.94 × 0.97 = 0.884
をベースにし、そこに温度補正を掛けて総合設計係数を月別に算定しています。

つまり、環境省系の近年資料では、基本設計係数のベースは0.88台で置かれており、エネがえるの基本設計係数初期値0.85はこれよりやや保守的な実務値と言えます。


・基本設計係数0.90

0.90前後は、高効率モジュール・高効率PCSを前提にしたメーカー実勢値に近い水準です。
京セラはJIS C 8907に基づく発電量解説で、基本設計係数 K’ = 0.926 を明示しています。シャープも産業用資料で、基本設計係数 0.922 を示しています。いずれもJISベースの算定です。

したがって、0.90という値は「楽観値」ではなく、特定メーカーの高効率システム実例に照らすと十分あり得る水準です。ただし、これは機器性能や前提が揃った場合の値であり、全案件一律の公的標準値ではありません。


3. エネがえるの基本設計係数0.85の蓋然性・根拠

エネがえるの基本設計係数初期値0.85は、JIS C 8907の考え方に反する独自値ではなく、公的な保守推計で採用される0.76前後と、近年の高効率機器を前提としたメーカー実勢値0.92前後の中間に位置する、実務上妥当な初期値として設定しています。

JIS C 8907は基本設計係数を一律固定値で規定しておらず、日射量変動、経時変化、配線・回路損失、負荷整合損失、インバータ効率等から構成的に求める考え方を採っています。

環境省SHIFTの簡便計算例では K’=0.756、公的な自治体資料でも0.76採用例がある一方、環境省の近年ポテンシャル調査では建物系の基本設計係数ベースが0.884、メーカー公開資料では京セラ0.926、シャープ0.922が示されています。

これらを踏まえると、0.85は過度に保守的でも過度に楽観的でもない中間的な初期設定値と整理できます。このため、エネがえるで受託している環境省、地方自治体のシミュレーション受託案件でも0.85を前提に試算結果を納品しています。

さらに、少し踏み込んで言うなら、0.85は「案件初期の概算試算用の標準値」としてはかなりバランスが良いです。

理由は3つです。

  1. 0.76は公共調査では説明しやすいが、近年の高効率機器実勢より保守寄り

  2. 0.90超は高性能実機に整合するが、全案件一律初期値としてはやや強気

  3. 0.85は、公的推計で見られる0.85級の年間係数や、環境省の0.884ベースとも大きく乖離しない


4. 数値の違いでどれだけ発電量が変わるか

温度補正をいったん除いた、基本設計係数だけの比較だと次の通りです。

  • 0.76 → 0.85:発電量は 約11.8%増

  • 0.85 → 0.90:発電量は 約5.9%増

  • 0.76 → 0.90:発電量は 約18.4%増

これは単純に係数比で決まります。
たとえば、日射条件等が同じで、係数以外の条件が同一なら、

  • 係数0.76なら 基準発電量 × 0.76

  • 係数0.85なら 基準発電量 × 0.85

  • 係数0.90なら 基準発電量 × 0.90

になります。

1,000 kWh/kW・年 を基準にした説明例

  • 0.76 → 760 kWh/kW・年

  • 0.85 → 850 kWh/kW・年

  • 0.90 → 900 kWh/kW・年

差分は

  • 0.85 − 0.76 = 90 kWh/kW・年

  • 0.90 − 0.85 = 50 kWh/kW・年

  • 0.90 − 0.76 = 140 kWh/kW・年

10 kWシステムなら

  • 0.76 → 7,600 kWh/年

  • 0.85 → 8,500 kWh/年

  • 0.90 → 9,000 kWh/年

差分は

  • 0.85 と 0.76 の差:900 kWh/年

  • 0.90 と 0.85 の差:500 kWh/年

  • 0.90 と 0.76 の差:1,400 kWh/年

つまり、係数を0.76から0.85へ上げる影響は、案件規模が大きいほど無視できません。

だからこそ、初期診断では0.85のような中庸値を使い、詳細提案段階でメーカー・PCS・設置方式・温度条件に合わせて補正する運用が合理的です。これはJISの思想にも合っています。


5. 実務的な言い分け

官公庁・自治体向け

基本設計係数はJIS C 8907の考え方に基づき設定されるもので、一律固定値ではありません。公的な簡便推計では0.76前後の採用例がある一方、近年の環境省調査では建物系ベースで0.884相当、東京都の屋根台帳では総合設計係数0.85が用いられています。エネがえるの0.85は、これらの公的推計と近年の設備実勢の中間に位置する初期設定値(数値は可変)です。

販売施工店・メーカー向け

0.85は保守推計の0.76よりは実勢に近く、かつメーカー公表の0.922~0.926よりは控えめな値です。初期提案時の標準値として妥当性が高く、詳細見積時にはメーカー公表値やPCS実効効率に応じて個別補正する前提です。


6. 一番大事な注意点

「JIS推奨値(基本設計係数)0.756」という言い方は、厳密には避けたほうが安全です。

より正確には、

公的簡便推計で広く使われる保守的な参考値が0.76前後

と表現するのが適切です。

JISは計算の枠組みを定めており、0.76固定を全国一律推奨しているわけではありません。

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