Q1. エネがえるBizで「自家消費+FIP」の試算はできますか?
はい。
エネがえるBizの診断レポート(Excel)にある売電収入機能を使用することで、自家消費による電気代削減効果に、FIPを想定した余剰売電収入を加えた簡易試算ができます。
ただし、エネがえるBizがFIPプレミアムやJEPX市場価格を月別・30分値別に計算するものではありません。
余剰電力量に、FIPを考慮した任意の固定単価を掛けることで、次のような概算を行う機能です。
年間導入効果=自家消費による電気代削減額+余剰売電収入
Q2. どこに入力すればよいですか?
エネがえるBiz診断レポート(Excel)の「キャッシュフロー」シートで、以下の2項目を入力してください。
余剰売電単価(円/kWh):キャッシュフロー!E10
余剰売電適用期間(年):キャッシュフロー!E11
売電収入を反映する場合は、単価と期間の両方を入力する必要があります。
どちらか一方でも0の場合、売電収入は計算されず、従来どおり「電気代削減のみ」の試算になります。
Q3. FIPを想定する場合、余剰売電単価には何を入力しますか?
FIPを想定する場合は、単なる市場価格ではなく、以下を加減した実効受取単価を入力してください。
実効受取単価の考え方
市場・相対契約による売電単価
+ FIPプレミアム
+ 非化石価値などの収入
- アグリゲーター手数料
- インバランス・取引関連費用
例えば、売電先やアグリゲーターから提示された条件をもとに、最終的な手取り見込みが10円/kWhであれば、E10に「10」を入力します。
なお、アグリゲーターや売電先との契約条件によって、含まれる費用や収入項目は異なります。
Q4. 売電収入はどのように計算されますか?
売電収入は、原則として以下の式で計算されます。
売電収入=余剰売電単価×売電対象となる余剰電力量
売電対象の電力量は、「導入効果」シートに表示される初年度の余剰電力量を起点として、太陽光パネルの経年劣化を考慮しながら年次計算されます。
自家消費した電力量は、電気代削減効果として評価されます。
売電収入の対象となるのは、原則として自家消費されず、系統側へ送電される余剰電力量です。
Q5. 売電収入はどこに反映されますか?
「キャッシュフロー」シートに、以下の項目として反映されます。
①-2 収入:売電収入
①収入計
年次キャッシュフロー
累積キャッシュフロー
投資回収期間
利益・投資効果に関連する指標
売電単価と売電期間が入力されている場合、収入計の表示が「電気代削減」から「電気代削減+売電」に切り替わります。
Q6. 「余剰売電適用期間」は何年を入力すればよいですか?
売電収入が計上される期間は、以下のうち短い方です。
太陽光パネル稼働年数:キャッシュフロー!E13
余剰売電適用期間:キャッシュフロー!E11
例えば、太陽光パネル稼働年数が25年、余剰売電適用期間が20年の場合、売電収入は20年目まで計上され、21年目以降は0円になります。
入力期間の目安
FIT・FIPなどの制度利用を想定する場合
原則として制度上の交付期間や契約期間を入力
事業用太陽光では20年を設定するケースが一般的
非FIT・相対契約・市場連動売電を想定する場合
契約期間が明確な場合は、その契約期間を入力
将来条件が未確定の場合は、1~3年程度で試算
長期試算を行う場合は、感度分析として扱うことを推奨
Q7. FIP基準価格をそのまま入力すればよいですか?
必ずしも基準価格をそのまま入力するわけではありません。
FIPでは、FITのように一定の買取単価で電力を買い取る仕組みではなく、市場や相対契約による売電収入に、FIPプレミアム等が加算されます。
そのため、E10には以下を反映した最終的な実効受取単価を入力するのが適切です。
市場または相対契約による売電価格
FIPプレミアム
非化石価値等の収入
アグリゲーター手数料
インバランス関連費用
その他の取引費用
実際の単価は、売電先やアグリゲーターから提示された条件をご確認ください。
Q8. 1~5年目と6年目以降で単価が異なる場合も試算できますか?
現状の売電収入機能では、基本的に1つの固定単価と1つの適用期間を設定します。
そのため、以下のように年度によって単価が変わる制度や契約を、そのまま年次別に設定することはできません。
例:
1~5年目:19円/kWh
6~20年目:8.3円/kWh
このような場合、全期間の単純加重平均単価を入力することで、20年間の売電収入総額を概算することはできます。
ただし、平均単価を使用すると、前半の売電収入を過少評価し、後半の売電収入を過大評価するため、以下の指標に差が生じる可能性があります。
投資回収期間
累積キャッシュフロー
NPV
IRR
年度別の正確な事業収支が必要な場合は、年次ごとに単価を設定した別途計算が必要です。
Q9. 現在の機能で再現できないFIP要素はありますか?
はい。現在の売電収入機能は固定単価による簡易試算のため、以下の項目は自動計算されません。
月別のFIPプレミアム
30分値ごとのJEPX市場価格
エリア別・時間帯別の市場価格差
出力制御や市場価格0.01円/kWh時の影響
インバランス料金の実績精算
アグリゲーター手数料の個別計算
非化石価値取引収入の個別計算
蓄電池を利用した高値時間帯への売電シフト収益
契約更新時の売電単価変動
これらを考慮する場合は、あらかじめ実効受取単価へ織り込むか、別途詳細なFIP収益シミュレーションを行ってください。
Q10. 蓄電池を併設している場合の注意点はありますか?
蓄電池を併設する場合は、売電した電力量の電源由来に注意が必要です。
特に、以下の電力量が混在する場合があります。
太陽光の余剰電力から充電した電力量
系統から充電した電力量
蓄電池から放電して売電した電力量
FIPプレミアムの対象となる電力量は、原則として認定発電設備由来の電力量です。
系統充電分と太陽光由来分を区別せず、蓄電池からの売電量すべてにFIP想定単価を掛けると、売電収入を過大評価する可能性があります。
蓄電池を含むFIP収益を評価する場合は、太陽光由来の充電量と系統由来の充電量を区別できるか、事前に確認してください。
Q11. どのような用途に向いていますか?
現在の機能は、以下の用途に適しています。
自家消費型太陽光と余剰売電を組み合わせた初期提案
FIPを想定した概算事業性評価
太陽光・蓄電池容量の比較
売電単価別の感度分析
余剰電力を売電した場合としない場合の比較
社内検討や顧客への初期説明
一方で、以下の用途では別途詳細な検証を推奨します。
金融機関への融資審査資料
投資委員会向けの正式な事業収支
JEPX価格連動型契約の精密評価
アグリゲーション事業の収益評価
蓄電池を用いた市場取引・裁定取引の評価
Q12. FAQや提案書では、どのように表現すればよいですか?
以下の表現を推奨します。
自家消費+FIP想定収益の簡易試算
― 固定の実効売電単価を用いた概算 ―
「FIP収益を完全に再現する」「FIPプレミアムを自動計算する」といった表現は避けてください。
入力例
2026年度の事業用太陽光・屋根設置では、FIP基準価格が1~5年目19円/kWh、6~20年目8.3円/kWhです。単純な年数加重平均は10.975円/kWhになります。(経済産業省)
エネがえるBizの余剰電力量が太陽光劣化に伴って年々減少する前提なら、後半15年間より前半5年間の電力量が少し多くなるため、11.0円ではなく11.1円/kWh×20年が、20年間の売電収入総額に最も近い入力値です。
推奨入力
余剰売電単価:11.1円/kWh
余剰売電適用期間:20年
ただし、これは制度上の基準価格相当収入を固定単価に置き換えたグロス値です。アグリゲーター手数料などを控除した最終手取りを保証する単価ではありません。
加重平均の計算
単純な年数加重平均
[
\frac{19円\times5年+8.3円\times15年}{20年}
=10.975円/kWh
]
発電量の劣化を考慮した平均単価
余剰電力量も年間発電量と同じ比率で減少すると仮定した場合です。
年間劣化率 | 20年間の電力量加重平均 | 実務上の入力値 |
0% | 10.975円 | 11.0円 |
0.3% | 11.036円 | 11.0円 |
0.5% | 11.076円 | 11.1円 |
0.7% | 11.118円 | 11.1円 |
1.0% | 11.180円 | 11.2円 |
したがって、通常想定される劣化率の範囲では、11.0~11.2円/kWhに収まり、標準値は11.1円/kWhが妥当です。
具体的な入力シナリオ
屋根設置・2026年度FIP想定
シナリオ | 売電単価 | 期間 | 位置づけ |
制度価格・簡易 | 11.0円 | 20年 | 単純加重平均。説明しやすい |
制度価格・推奨 | 11.1円 | 20年 | 発電劣化を考慮。総収入の再現性が比較的高い |
手取り・標準 | 10.5円 | 20年 | 11.1円から0.6円/kWhを費用・差異として控除する仮定 |
手取り・保守的 | 10.0円 | 20年 | 1.1円/kWhを控除する仮定 |
ストレスケース | 9.0~9.5円 | 20年 | 手数料、価格差、対象外電力量等を厳しく見るケース |
FIPでは、発電事業者の収入が「市場・相対取引による売電収入+プレミアム+非化石価値収入」で構成され、プレミアムは市場参照価格等に基づき月ごとに変動します。そのため、基準価格と実際の手取り単価は完全には一致しません。(エネポータル)
実務で契約条件が未確定なら、以下の3ケース比較が最も使いやすいです。
保守ケース:10.0円/kWh×20年
標準ケース:10.5円/kWh×20年
制度基準ケース:11.1円/kWh×20年
地上設置の場合
2026年度の地上設置は、屋根設置のような19円・8.3円の二段階価格ではありません。公表されている基準価格・上限価格をそのまま20年間設定する考え方になります。(経済産業省)
設備区分 | 入力単価例 | 期間 |
地上設置・10kW以上50kW未満 | 9.9円/kWh | 20年 |
地上設置・50kW以上・入札対象外 | 9.6円/kWh | 20年 |
地上設置・250kW以上・入札対象 | 実際の落札価格 | 20年 |
入札案件の上限を仮置き | 9.6円/kWh | 20年 |
入札対象案件は上限価格ではなく、実際の落札価格を入力するのが原則です。
重要な限界
11.1円×20年を入力すると、20年間の売電収入総額は比較的近くなりますが、年次キャッシュフローは一致しません。
期間 | 本来の価格 | 11.1円固定との差 |
1~5年目 | 19円 | 約7.9円/kWh過少 |
6~20年目 | 8.3円 | 約2.8円/kWh過大 |
このため、固定加重平均方式では、
初期5年間のキャッシュフローを過少評価
投資回収期間を実際より遅く表示する可能性
後半15年間の収入を過大評価
NPV・IRRを正確には再現できない
というズレが生じます。
最終推奨
利用目的 | 推奨入力 |
顧客への簡易提案・総収入比較 | 11.1円×20年 |
契約未確定段階の標準試算 | 10.5円×20年 |
保守的な投資判断 | 10.0円×20年 |
売電先の条件が確定済み | 提示された実効手取り単価×契約期間 |
融資・投資委員会・正確なIRR計算 | 加重平均を使わず、19円×5年+8.3円×15年で別途年次計算 |
Intercom FAQの推奨初期値は「11.1円/kWh×20年」とし、併記する感度分析を10.0円/10.5円/11.1円の3ケースにするのが、説明可能性と安全性のバランスが最も良いです。
注意事項
売電単価は、税込・税抜、地域、契約種別、時間帯、市場価格等により異なります。
入力した単価の根拠と前提条件は、提案書や診断資料に明記してください。
FIPの制度条件や基準価格は、認定年度、設備区分、出力、設置形態等により異なります。
売電先やアグリゲーターとの契約条件は、提案時点の最新情報を確認してください。
本機能は固定単価による概算であり、将来の売電収入を保証するものではありません。
参考情報
資源エネルギー庁:再生可能エネルギーのFIT・FIP制度
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/kaitori/
経済産業省:調達価格等に関する公表情報
https://www.meti.go.jp/press/2024/03/20250321006/20250321006.html
