産業用自家消費型PVにおける負荷追従ロスと最低購買電力設定ガイド
はじめに
100kW~3MW規模の工場・物流施設・事業所向け自家消費型太陽光発電では、**逆潮流(系統への余剰送電)を防ぐために発電出力を需要に追従させる制御(負荷追従制御)が重要です。
この負荷追従制御では、パワーコンディショナ(PCS)やエネルギーマネジメントシステム(EMS)が瞬時に発電を抑制し、需要を上回らないようにします。
しかし実際には制御誤差や応答遅れによるロス(発電出力の抑制による未利用エネルギーや、微小な不足電力の系統からの購入)が発生します。
シミュレーションソフト「エネがえるBiz」では、このロスを明示的には計算していないため、「最低購買電力(kW)」**というパラメータを用いて簡易補正を行うことができます (〖Biz〗最低購買電力(kW)の指定とはなんですか?(負荷追従制御のロスを反映できるか?) | エネがえるFAQ(よくあるご質問と答え)) (〖Biz〗最低購買電力(kW)の指定とはなんですか?(負荷追従制御のロスを反映できるか?) | エネがえるFAQ(よくあるご質問と答え))。
本レポートでは以下のポイントについて詳しく解説し、実務でエネがえるBizの試算補正に活用できるガイドラインを提示します。
最低購買電力(kW)の意味とロス補正の仕組み
負荷追従制御における実際の制御誤差・ロス(瞬時過不足・タイムラグ)
各社PCS/負荷追従制御装置の設定可能な「最低出力制限」や「追従誤差」の相場値
ピークカット・自家消費最大化への影響と、補正無の場合に生じるシミュレーション過大評価
最低購買電力の推奨設定値(kWまたは負荷割合)とその算出根拠・事例
1. 最低購買電力(kW)とは何か?~意味とロス補正の仕組み~
「最低購買電力」とは、自家消費型PVシステムのシミュレーションにおいて、あえて確保しておく系統からの最低電力購入量を指すパラメータです (〖Biz〗最低購買電力(kW)の指定とはなんですか?(負荷追従制御のロスを反映できるか?) | エネがえるFAQ(よくあるご質問と答え))。
エネがえるBizでは負荷追従制御そのものの詳細なシミュレーションは行えませんが、この値を設定することでその分だけ発電による自家消費を抑える計算が可能です (〖Biz〗最低購買電力(kW)の指定とはなんですか?(負荷追従制御のロスを反映できるか?) | エネがえるFAQ(よくあるご質問と答え)) (〖Biz〗最低購買電力(kW)の指定とはなんですか?(負荷追従制御のロスを反映できるか?) | エネがえるFAQ(よくあるご質問と答え))。
簡単に言えば、「常に最低○kWは電力会社から買うようにする(=発電出力を需要より少し低めに抑える)」と仮定することで、負荷追従制御時の発電抑制ロスをモデル化します。
こうすることで、負荷追従型システムで実際に行われる**「安全マージンをもった発電抑制」**を試算に反映できます (〖Biz〗最低購買電力(kW)の指定とはなんですか?(負荷追従制御のロスを反映できるか?) | エネがえるFAQ(よくあるご質問と答え)) (〖Biz〗最低購買電力(kW)の指定とはなんですか?(負荷追従制御のロスを反映できるか?) | エネがえるFAQ(よくあるご質問と答え))。
例えば最低購買電力を5kWと設定すれば、シミュレーション上は需要が太陽光でまかなえる場合でも常に5kWは系統から購入する(=太陽光発電出力を需要より5kW低く抑える)結果になり、逆潮流を防ぐための出力抑制を表現できます (〖Biz〗最低購買電力(kW)の指定とはなんですか?(負荷追従制御のロスを反映できるか?) | エネがえるFAQ(よくあるご質問と答え)) (〖Biz〗最低購買電力(kW)の指定とはなんですか?(負荷追従制御のロスを反映できるか?) | エネがえるFAQ(よくあるご質問と答え))。
この機能は元々産業用蓄電池メーカーの要望で追加された経緯があり、発電量制御の簡易試算に用いることを目的としています (〖Biz〗最低購買電力(kW)の指定とはなんですか?(負荷追従制御のロスを反映できるか?) | エネがえるFAQ(よくあるご質問と答え)) (〖Biz〗最低購買電力(kW)の指定とはなんですか?(負荷追従制御のロスを反映できるか?) | エネがえるFAQ(よくあるご質問と答え))。
【ポイント】:最低購買電力を設定すると、その値分だけ常に系統からの受電を確保する形になるため、太陽光の自家消費量を控えめに見積もることになります (〖Biz〗最低購買電力(kW)の指定とはなんですか?(負荷追従制御のロスを反映できるか?) | エネがえるFAQ(よくあるご質問と答え))。
これは負荷追従装置(例:逆電力継電器RPRや出力制御装置)が実際に「必要以上に発電量を抑えて系統からの受電を確保する」挙動を再現したものです (〖Biz〗最低購買電力(kW)の指定とはなんですか?(負荷追従制御のロスを反映できるか?) | エネがえるFAQ(よくあるご質問と答え))。
2. 負荷追従制御の実際の誤差・ロス ~瞬時過不足とタイムラグ~
リアルタイムの負荷追従制御では、発電と需要を完全に一致させることは理想的には可能でも、実際にはわずかなズレやタイムラグが生じます。このズレは以下の形で現れます:
瞬時の発電過剰:需要が急減した瞬間などに発電が一時的に上回ると、**逆電力(逆潮流)が発生しRPRが動作します。これを避けるため、制御は通常少し発電を抑え気味に動作します (オムロンの自家消費システムについて紹介!メリットや注意点も解説 - 太陽光発電所の再生可能エネルギー・カーボンニュートラル情報メディア)。古い制御方式や追従速度の遅いシステムでは、余裕を持って「需要の70~80%程度」**までしか発電させない運用例もありました (〖CROSS TALK〗太陽光は自家消費時代へ── いまパワコンに求められる性能とは?|SOLAR JOURNAL)。つまり需要より20~30%低く発電を抑えることで、負荷急変時の逆潮流リスクを避けていたわけです (〖CROSS TALK〗太陽光は自家消費時代へ── いまパワコンに求められる性能とは?|SOLAR JOURNAL)。この場合、残り20~30%は常に系統から購入するため、大きな発電ロスとなります。
瞬時の発電不足:需要が急増した瞬間に発電が追いつかず不足する場合、その差分は一瞬系統からの電力で補われます。こちらは安全上問題はありませんが、その間太陽光の出力を増やせる余裕があっても上げられなかったという意味でロス(機会損失)です (オムロンの自家消費システムについて紹介!メリットや注意点も解説 - 太陽光発電所の再生可能エネルギー・カーボンニュートラル情報メディア)。もっとも、過剰よりは不足のほうが許容されるため、負荷追従制御では「多少不足する状態(=常にわずかに買電する状態)を維持する」ことが一般的です (〖Biz〗最低購買電力(kW)の指定とはなんですか?(負荷追従制御のロスを反映できるか?) | エネがえるFAQ(よくあるご質問と答え))。
制御の応答遅れ:パワコンやEMSが需要変動を検知し出力を調整するのに、わずかな遅れ(数百ミリ秒~数秒程度)が発生します。最新の高性能システムでは0.2~0.5秒以内の高速制御応答が可能なものもあります (「ソーラーモニターオフグリッド」 2機種パワーコンディショナーに対する逆潮流防止制御機能を搭載 | エナジー・ソリューションズのプレスリリース | 共同通信PRワイヤー)。例えばエナジー・ソリューションズ社のEMSでは0.2~0.5秒でPCS出力を追従制御し、RPRが動作しないようにしています (「ソーラーモニターオフグリッド」 2機種パワーコンディショナーに対する逆潮流防止制御機能を搭載 | エナジー・ソリューションズのプレスリリース | 共同通信PRワイヤー)。しかし制御が遅れるとその間に逆潮流が発生しうるため、制御装置は**RPRの作動までの猶予時間内(一般的に1~2秒未満)**に出力を下げる必要があります (FIP転+蓄電池向け!Wave Energyの再エネEMS | 再生可能エネルギーの専門メディア PVeyeWEB)。タイムラグを見込んで出力にマージンを持たせておくことで、RPR誤動作を未然に防ぐのが実務上の対策です (「ソーラーモニターオフグリッド」 2機種パワーコンディショナーに対する逆潮流防止制御機能を搭載 | エナジー・ソリューションズのプレスリリース | 共同通信PRワイヤー) (「ソーラーモニターオフグリッド」 2機種パワーコンディショナーに対する逆潮流防止制御機能を搭載 | エナジー・ソリューションズのプレスリリース | 共同通信PRワイヤー)。
実際の高精度な負荷追従型システムでは、これらの誤差を極力小さく抑えています。オムロンの完全自家消費システムは「約99%という高い精度」で負荷に追従し、無駄な発電を最小限にしています (完全自家消費低圧単相システムのご紹介 | お役立ち情報 | 再生可能エネルギーを創り活用するエネルギーソリューション | オムロン ソーシアルソリューションズ)。
これはすなわち理論上の需要に対して1%程度の誤差しかなく、常時1%程度の電力を系統から購入するだけで済むことを意味します (完全自家消費低圧単相システムのご紹介 | お役立ち情報 | 再生可能エネルギーを創り活用するエネルギーソリューション | オムロン ソーシアルソリューションズ)。一方、精度が低いシステムでは前述のように10%以上余裕を見なければならず、その場合発電抑制によるロスが大きくなります。
【図:負荷追従制御の概念図】負荷追従制御オプション搭載システムの構成例 (負荷追従制御オプションについて | 太陽光発電を遠隔監視するエコめがね)。左上のグラフは太陽光発電出力と需要(受電電力)の関係を示しており、需要が小さい時間帯には発電を抑制し、一定の受電電力(最低購買電力に相当)を確保していることが分かります。
制御装置は電力メータから需要を①計測し、閾値を下回ると②指示を出してPCSの一部を停止することで③発電抑制を実行します (負荷追従制御オプションについて | 太陽光発電を遠隔監視するエコめがね) (負荷追従制御オプションについて | 太陽光発電を遠隔監視するエコめがね)。これにより0.3秒という高速な応答でRPRの動作を防ぎ、発電ロスを最小限にとどめます (負荷追従制御オプションについて | 太陽光発電を遠隔監視するエコめがね)。
3. 各社パワコン/追従制御装置の「最低出力制限・追従精度」設定値の相場
負荷追従制御の性能指標としては、「追従精度(需要に対して何%まで発電を追従させるか)」や「最低出力制限(常に残しておく系統からの受電の大きさ)」が挙げられます。主要メーカーやシステムの例を挙げると以下の通りです:
オムロン:高精度負荷追従機能を備え、約99%の追従率(誤差約1%)を実現 (完全自家消費低圧単相システムのご紹介 | お役立ち情報 | 再生可能エネルギーを創り活用するエネルギーソリューション | オムロン ソーシアルソリューションズ) (オムロンの自家消費システムについて紹介!メリットや注意点も解説 - 太陽光発電所の再生可能エネルギー・カーボンニュートラル情報メディア)。従来は需要比で10%以上発電を抑制する設定が一般的でしたが、本システムでは発電上限を需要の約99%まで高めています (最小の構成機器数で最大の発電量を実現する産業太陽光発電向け「完全自家消費三相システム」の発売について | オムロン)。例えば需要100kWに対し発電99kW・買電1kW程度まで迫れる性能です。設定上は「常時約1%の系統受電を残す」イメージで、需要変動に高速追従します。
Wave Energy(ウェーブエナジー):自社開発EMS「みまもる君」で100%に近い精度での負荷追従を実現 (FIP転+蓄電池向け!Wave Energyの再エネEMS | 再生可能エネルギーの専門メディア PVeyeWEB)。RPRと電力量計を一体化し誤差要因を排除することで、高速・高精度な制御を可能にしています (〖CROSS TALK〗太陽光は自家消費時代へ── いまパワコンに求められる性能とは?|SOLAR JOURNAL)。具体的には逆潮流を検知してから2秒以内にPCS出力を抑制し、RPR動作を回避する仕組みです (FIP転+蓄電池向け!Wave Energyの再エネEMS | 再生可能エネルギーの専門メディア PVeyeWEB)。実績として450件以上の自家消費案件でRPR停止ゼロを達成しており、**追従誤差はごくわずか(1%未満級)**とされています (FIP転+蓄電池向け!Wave Energyの再エネEMS | 再生可能エネルギーの専門メディア PVeyeWEB)。
Huawei(ファーウェイ)製パワコン:海外メーカーながら、近年日本の自家消費型案件でも評価が高いパワコンです (〖CROSS TALK〗太陽光は自家消費時代へ── いまパワコンに求められる性能とは?|SOLAR JOURNAL)。特に高速・高精度な追従性能が求められる自家消費用途で、Huaweiのパワコンは安定した性能を示しています。実際、あるEPC事業者は他社製パワコンで苦労した後にHuawei製を採用し、不具合なくスムーズに稼働できたと述べています (〖CROSS TALK〗太陽光は自家消費時代へ── いまパワコンに求められる性能とは?|SOLAR JOURNAL)。Huaweiパワコン自体はSmartLogger等のエネルギーモニタと組み合わせて出力を閉ループ制御する機能があり (C&I ESS性能仕様とシステム機能に関する質問 - Huawei)、適切に制御すれば追従誤差は数%以内に収まると考えられます(実際Wave Energy社の高精度追従ソリューションもHuaweiパワコンを用いて実現されたと報じられています (〖CROSS TALK〗太陽光は自家消費時代へ── いまパワコンに求められる性能とは?|SOLAR JOURNAL) (〖CROSS TALK〗太陽光は自家消費時代へ── いまパワコンに求められる性能とは?|SOLAR JOURNAL))。
ラプラス・システムズ(Solar Legato等):負荷追従型の出力制御装置を提供しており、ユーザー設定可能なパラメータとして**「発電出力=消費電力の○%」や「最低○kWの受電閾値」があります ()。例えば同社マニュアルでは初期設定として比例係数90%**(消費の90%を太陽光発電で賄う)・固定値B=10kW(合計買電電力が10kW以下になったら出力0%指令を送る)といった例が示されています () ()。この場合、平常時は需要の90%まで発電しつつ最低10kWは系統から購入する制御となります。RPRが頻繁に動作する場合は比例係数Aをさらに下げ(例えば80%台へ)、安定して逆潮流が防げる範囲を探るよう推奨されています () ()。
安川電機:安川製パワコン「Enewell-SOL」シリーズは自家消費用途向けに逆潮流防止機能を内蔵しており、高速自家消費制御により買電目標値を“ゼロ”に近づける運用が可能と謳われています (自家消費型太陽光発電システムに最適なパワーコンディショナ 三相 ...)。NTTスマイルエナジーとの協業では、一般的に消費の80~90%に抑えていた発電を99%程度まで追従できることが測定されています (「エコめがね自家消費モバイルパック」の三相パワーコンディショナ対応機種追加及び「エコめがね完全自家消費三相パワコンセット」販売開始について | NTTスマイルエナジー)。※この「99%程度」はオムロン社の開発環境での測定値とされています (「エコめがね自家消費モバイルパック」の三相パワーコンディショナ対応機種追加及び「エコめがね完全自家消費三相パワコンセット」販売開始について | NTTスマイルエナジー)が、安川パワコン+エコめがね制御パッケージで高精度追従が実現できていることを示す事例です。
以上のように、従来は需要の80~90%までしか追従できない(10~20%抑制が必要)ケースも多かったのが、最新のシステムでは95~99%程度まで発電出力を需要に追従可能になっています (最小の構成機器数で最大の発電量を実現する産業太陽光発電向け「完全自家消費三相システム」の発売について | オムロン) (「エコめがね自家消費モバイルパック」の三相パワーコンディショナ対応機種追加及び「エコめがね完全自家消費三相パワコンセット」販売開始について | NTTスマイルエナジー)。
設定可能な「最低出力制限値」としては、需要の5~10%(系統受電分)を確保する値が一つの目安で、装置によってkW単位または%単位で調整できます。例えばオムロンのシステムでは自動的に約1%の受電を維持しますし、NTTエコめがね+安川パワコンでは閾値をほぼ0に設定して運用できるようになっています (「エコめがね自家消費モバイルパック」の三相パワーコンディショナ対応機種追加及び「エコめがね完全自家消費三相パワコンセット」販売開始について | NTTスマイルエナジー)。
4. ピークカット・自家消費率への影響とシミュレーション過大評価のリスク
負荷追従制御による発電抑制は、ピーク電力のカット量や自家消費率の見かけに影響を与えます。シミュレーションでこのロスを無視すると、効果を過大評価する可能性があります。
ピークカット効果への影響:最低購買電力を設定しないシミュレーションでは、「太陽光発電が需要を完全に満たせばその時間帯の系統購入電力は0になる」と仮定します。しかし実際の負荷追従では完全に0にはできず、少なくとも数kW~数%程度は系統から買電が残ります (最小の構成機器数で最大の発電量を実現する産業太陽光発電向け「完全自家消費三相システム」の発売について | オムロン)。例えばピーク需要が100kWの工場に100kWの太陽光を設置した場合、理想計算ではピーク時の買電0kW(100%ピークカット)になりますが、実際は最低5kW程度の買電を残すとするとピーク電力は5kW発生します。需要電力の尖峰値をゼロにできない分、デマンド契約の削減効果もその分減少します。シミュレーション上0kWと見積もっていたものが実際は5kWとなれば、デマンド費用削減額は過大に見積もられていたことになります。
自家消費エネルギー・損失エネルギー:発電抑制により一部の太陽光エネルギーが利用されず捨てられるため、自家消費率(発電した電力のうち自家消費できた割合)が低下します (オムロンの自家消費システムについて紹介!メリットや注意点も解説 - 太陽光発電所の再生可能エネルギー・カーボンニュートラル情報メディア)。最低購買電力を設定しないシミュレーションでは、「発電した電力は需要の範囲内であれば100%自家消費された」と仮定します。しかし実際は99%程度までしか使えず1%は捨てられる、といったことが起こります (最小の構成機器数で最大の発電量を実現する産業太陽光発電向け「完全自家消費三相システム」の発売について | オムロン)。特に日中需要が小さい場合には発電抑制量(ロスエネルギー)が増え、シミュレーションとの差が大きくなります。例えば需要が50kWしかない時間帯にPVが60kW発電可能でも、逆潮流防止のため50kWまで抑えて発電し10kW分は捨てる、といったケースです。この10kW分はシミュレーション上は有効活用されたと計算されていれば、その分の電力削減効果が実現しないことになります。
経済性評価:上記のピークカット効果・エネルギー自家消費効果の過大評価は、ひいては電気料金削減額や投資回収効果の過大評価につながります。例えば年間の想定自家消費量が5%過大なら、電気料金削減額も同程度過大に出てしまいます。負荷追従ロスを補正しないと、ROI(投資利益率)や回収年数の算定にズレが生じ、実際導入後に「思ったほど削減できない」事態になりかねません。
以上から、精度の高いシミュレーションには最低購買電力による補正が不可欠です。特にピークカットを重視する場合、ピーク時に残る買電(未カット分)が何kWかを見積もっておくことが重要です (〖CROSS TALK〗太陽光は自家消費時代へ── いまパワコンに求められる性能とは?|SOLAR JOURNAL)。高精度な追従装置なら残り数%以内で済みますが、装置性能が不明瞭な場合は5~10%程度のピーク残しを想定しておくと安全です (〖Biz〗最低購買電力(kW)の指定とはなんですか?(負荷追従制御のロスを反映できるか?) | エネがえるFAQ(よくあるご質問と答え))。
5. 最低購買電力の適切な設定値と算出方法
では、実務上エネがえるBizの「最低購買電力(kW)」をどの程度に設定すべきでしょうか。推奨値としては、施設のピーク需要の5~10%程度が一つの目安になります (〖Biz〗最低購買電力(kW)の指定とはなんですか?(負荷追従制御のロスを反映できるか?) | エネがえるFAQ(よくあるご質問と答え)) (〖Biz〗最低購買電力(kW)の指定とはなんですか?(負荷追従制御のロスを反映できるか?) | エネがえるFAQ(よくあるご質問と答え))。エネがえるFAQでも「安全マージン」として5~10%の範囲で設定することが適切とされています (〖Biz〗最低購買電力(kW)の指定とはなんですか?(負荷追従制御のロスを反映できるか?) | エネがえるFAQ(よくあるご質問と答え))。以下に算出の考え方と具体例を示します:
推奨設定値の根拠: 5~10%という値幅は、前述のように多くの負荷追従システムが必要とする抑制率に基づいています (最小の構成機器数で最大の発電量を実現する産業太陽光発電向け「完全自家消費三相システム」の発売について | オムロン)。一般的なシステムでは少なくとも需要の数%分は発電を抑える必要があり、負荷変動が激しい場合や制御遅れがある場合でも逆潮流を防げるよう、やや大きめのマージンを取ります (〖CROSS TALK〗太陽光は自家消費時代へ── いまパワコンに求められる性能とは?|SOLAR JOURNAL) (「エコめがね自家消費モバイルパック」の三相パワーコンディショナ対応機種追加及び「エコめがね完全自家消費三相パワコンセット」販売開始について | NTTスマイルエナジー)。10%抑制すればまず確実に安全ですが、性能の良い装置なら5%でも十分なケースが多いです (〖Biz〗最低購買電力(kW)の指定とはなんですか?(負荷追従制御のロスを反映できるか?) | エネがえるFAQ(よくあるご質問と答え)) (最小の構成機器数で最大の発電量を実現する産業太陽光発電向け「完全自家消費三相システム」の発売について | オムロン)。したがって**5~10%**は汎用的に使える保守的な設定値と言えます。
数値的な算出例: 施設の最大需要(ピーク)が例えば500kWの場合、その5%は25kW、10%なら50kWです。そこで最低購買電力を25~50kW程度に設定します。仮に真ん中の**約7.5%(37.5kW)**を設定したとすると、シミュレーション上は太陽光発電がどんなに余裕があっても最低37.5kWは系統から買電する計算になります。実際の運用で負荷追従制御によりこれくらいの発電抑制が起こるだろう、という想定です。ピーク時100%自家消費(買電0)を見込むのではなく、37.5kWは残る前提で計算することで、過大な削減見積もりを避けています。
負荷特性に応じた調整: 上記はあくまで目安であり、より精緻には施設の負荷変動の速さや導入する制御装置の性能仕様を考慮します。例えば負荷の瞬間変動幅が大きい工場(機械のON/OFFが激しい等)では、瞬時過剰発電を防ぐためマージン多め(例:10%寄り)に設定します ()。逆に負荷が比較的緩やかに変動する施設や、高速追従型の最新パワコンを採用する場合は、5%程度でも十分でしょう (〖Biz〗最低購買電力(kW)の指定とはなんですか?(負荷追従制御のロスを反映できるか?) | エネがえるFAQ(よくあるご質問と答え)) (最小の構成機器数で最大の発電量を実現する産業太陽光発電向け「完全自家消費三相システム」の発売について | オムロン)。装置メーカーが「追従精度○%」と公称している場合は、それに少し上乗せした値をマージンとして設定すると安全です(例:追従精度98%なら最低購買2~5%程度など)。
実機・事例からの相場: 実例として、オムロンの完全自家消費システム導入事例では1~3%程度の系統受電が見られるとの報告があります(追従率97~99%) (完全自家消費低圧単相システムのご紹介 | お役立ち情報 | 再生可能エネルギーを創り活用するエネルギーソリューション | オムロン ソーシアルソリューションズ)。一方、初期の負荷追従運用では10~20%抑制する例もあったことから (「エコめがね自家消費モバイルパック」の三相パワーコンディショナ対応機種追加及び「エコめがね完全自家消費三相パワコンセット」販売開始について | NTTスマイルエナジー)、安全側に見るなら10%設定が用いられます。エネがえるBiz開発元の推奨も**5~10%**であり (〖Biz〗最低購買電力(kW)の指定とはなんですか?(負荷追従制御のロスを反映できるか?) | エネがえるFAQ(よくあるご質問と答え))、多くのユーザはこの範囲で設定してシミュレーションを行っています。特に根拠がなければ7~8%前後を仮設定し、重要案件では5%と10%の両極端でも試算して効果の振れ幅を確認する、といった使い方も有効です。
最後に、最低購買電力を設定したシミュレーション結果は「控えめな発電効果」となるため、一見メリットが減ったように見えるかもしれません。しかしこれは実態に即した姿であり、計画倒れを防ぐための健全な調整です (〖Biz〗最低購買電力(kW)の指定とはなんですか?(負荷追従制御のロスを反映できるか?) | エネがえるFAQ(よくあるご質問と答え))。逆潮流対策が万全なシステムほどロスは小さくできますが、それでも数%のロスは織り込むべきです。
したがって、本ガイドラインを参考にシミュレーション段階から適切な最低購買電力を設定し、現実的な効果予測と投資判断を行うことが重要です。
参考文献・情報源
オムロン ソーシアルソリューションズ:「完全自家消費低圧単相システムのご紹介」 (完全自家消費低圧単相システムのご紹介 | お役立ち情報 | 再生可能エネルギーを創り活用するエネルギーソリューション | オムロン ソーシアルソリューションズ)
太陽光発電専門メディア SOLAR JOURNAL:「いまパワコンに求められる性能とは?」 (〖CROSS TALK〗太陽光は自家消費時代へ── いまパワコンに求められる性能とは?|SOLAR JOURNAL) (〖CROSS TALK〗太陽光は自家消費時代へ── いまパワコンに求められる性能とは?|SOLAR JOURNAL)
NTTスマイルエナジー プレスリリース:「エコめがね完全自家消費三相パワコンセット」 (「エコめがね自家消費モバイルパック」の三相パワーコンディショナ対応機種追加及び「エコめがね完全自家消費三相パワコンセット」販売開始について | NTTスマイルエナジー)
ラプラス・システム「Solar Legato」機能説明書 () ()
Wave Energy 紹介記事(PVeye 2024年8月号) (FIP転+蓄電池向け!Wave Energyの再エネEMS | 再生可能エネルギーの専門メディア PVeyeWEB) (〖CROSS TALK〗太陽光は自家消費時代へ── いまパワコンに求められる性能とは?|SOLAR JOURNAL)
エナジー・ソリューションズ プレスリリース (「ソーラーモニターオフグリッド」 2機種パワーコンディショナーに対する逆潮流防止制御機能を搭載 | エナジー・ソリューションズのプレスリリース | 共同通信PRワイヤー) など.