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産業用自家消費型太陽光と産業用蓄電池の最適な容量はどうやって計算すればよいか?

一般的な考え方と計算式を記載します。

対応者:樋口 悟

FAQ:産業用自家消費型太陽光・蓄電池の最適容量はどう計算すればよいですか?

結論:最適容量は「屋根に載る最大容量」ではなく、需要家の負荷カーブ・料金条件・屋根条件・目的を同時に見て決めます。

まずは簡易式で当たりを付け、その後、エネがえるBizで複数ケースを比較して、余剰率・自家消費率・電気代削減額・ピークカット効果・投資回収年数・BCP効果を確認するのが実務上もっとも安全です。


Q1. まず何を決めればよいですか?

最初に決めるべきは「何を最適化したいか」です。産業用自家消費型太陽光・蓄電池の最適容量は、目的によって変わります。

目的

容量設計の考え方

電気代削減

昼間の買電量を減らす。余剰が出すぎない太陽光容量を優先

ピークカット

最大デマンドを下げる。蓄電池は容量kWhだけでなく出力kWが重要

CO₂削減・自家消費率向上

発電量を増やしつつ、余剰を抑える。蓄電池併設が有効

BCP・停電対策

非常時に残したい負荷と必要時間から蓄電池を決める

高圧受電では、30分ごとの平均使用電力のうち月間最大値が最大需要電力として扱われ、契約電力や基本料金に影響します。そのため、ピークカットを狙う場合は「年間kWh」だけでなく、30分デマンドの山をどれだけ下げられるかを見る必要があります。(東京電力)


Q2. 現場で5分で当たりを付ける簡易推計は?

最初の概算は、以下で十分です。

1. 昼間平均負荷を出す

昼間平均負荷(kW) = 月間消費電力量(kWh) × 昼間使用比率  ÷ 月間営業日数  ÷ 1日の昼間稼働時間

例:

月間消費電力量:30,000kWh 昼間使用比率:70% 営業日数:25日 昼間稼働時間:10時間  昼間平均負荷 = 30,000 × 0.7 ÷ 25 ÷ 10 = 84kW

この場合、最初に置く太陽光容量は以下です。

太陽光容量の目安 ≒ 昼間平均負荷 × 0.8〜1.2  84kW × 0.8〜1.2 = 約67〜101kW

まずは70kW、85kW、100kW程度の3ケースを作ると、比較しやすくなります。


Q3. 太陽光容量はどう決めればよいですか?

非FIT自家消費型では、原則として「発電した電気をどれだけその場で使えるか」が重要です。屋根いっぱいに載せるより、昼間負荷に合う容量から始めるのが安全です。

簡易式

太陽光容量の初期値(kW) ≒ 昼間平均負荷(kW) × 0.8〜1.2

屋根制約がある場合

搭載可能容量(kW) ≒ 有効屋根面積(㎡) ÷ 6〜8㎡/kW

これは初期スクリーニング用の実務目安です。実際には、モジュール寸法、離隔、通路、キュービクル・空調機器・トップライト・荷重条件・防水条件・影・消防動線などで変わります。

PCS容量・過積載率の考え方

過積載率 = 太陽光パネル容量(DC kW) ÷ PCS容量(AC kW)

実務上は、まず1.2〜1.5程度を候補に置いて比較します。NRELのPVWatts APIでもDC/AC比のデフォルト値は1.2とされており、太陽光の発電量推計ではDC容量とAC容量の比率が重要な入力値になります。(NREL Developer Network)


Q4. 発電量推計の前提は何を見ればよいですか?

発電量は、日射量、方位角、傾斜角、温度、影、損失係数などに左右されます。日本国内の日射量データとしては、NEDOがWEB版の国内日射量データベースを公開しており、月平均データのMONSOLA-20、時刻別データのMETPV-20が利用できます。(NEDO)

また、NEDOの解説書では、MONSOLA-20・METPV-20で改良した日照-日射モデルを用いて日射量データを整備していること、衛星データを利用した高密度化などが説明されています。

エネがえるBizでは、既存FAQの前提どおり、発電量推計において基本設計係数を用います。標準的には基本設計係数0.85を前提にし、より保守的または高効率前提にする場合は、案件条件に応じて調整します。なお、JIS C 8907は太陽光発電システムの発電電力量推定方法として参照される代表的な考え方であり、建築研究所の調査資料でもJIS C 8907の評価方法を調査対象としています。


Q5. 蓄電池容量はどう決めればよいですか?

蓄電池は、目的別に計算式を変えます。ここを混同すると、過大設計・過小設計になりやすいです。


A. 昼間余剰を夜間に使いたい場合

蓄電池容量(kWh) ≒ 1日平均余剰太陽光発電量(kWh) × 0.5〜1.0

より正確には、以下です。

必要な蓄電池容量(kWh) = 夜間に使いたい放電量(kWh)  ÷ 放電深度(DoD)  ÷ 充放電効率

この型は、昼間に太陽光余剰が出るが、夕方・夜間・早朝にも負荷がある工場、物流施設、冷蔵冷凍倉庫、宿泊施設、介護施設などに向いています。


B. ピークカット・基本料金削減を狙う場合

蓄電池容量(kWh) ≒ 削減したいピーク電力(kW) × 持続時間(h)  ÷ 充放電効率

ただし、ピークカットでは容量kWhだけでなく、蓄電池PCSの出力kWが重要です。

蓄電池PCS出力(kW) ≧ 削減したいピーク電力(kW)

例えば、200kWのピークを150kWに下げたい場合、削減したいピークは50kWです。ピークが2時間続くなら、最低限の放電エネルギーは100kWhです。

50kW × 2h = 100kWh

実際には、充放電効率、DoD、劣化、制御余裕を見て、100kWhより大きめに設計します。NRELの商業需要家向け太陽光+蓄電池研究でも、需要料金は顧客のピーク需要に基づく設計が重要であり、蓄電池のインバータ容量を需要家ピークに対する割合で評価しています。(nrel.gov)


C. BCP・停電対策を狙う場合

蓄電池容量(kWh) = 非常時に残したい必須負荷(kW) × 必要時間(h)  ÷ DoD  ÷ 充放電効率

例:

必須負荷:20kW 必要時間:6時間 DoD:90% 充放電効率:90%  必要容量 = 20 × 6 ÷ 0.9 ÷ 0.9 = 約148kWh

BCP型では、まず「全部を動かす」ではなく、何を残すかを決めます。照明、通信、サーバー、冷蔵冷凍、医療・介護設備、排水ポンプ、防災設備などを優先順位付けします。


Q6. エネがえるBizではどう進めればよいですか?

おすすめは、1案だけ作らないことです。最初から複数ケースを作り、目的別に比較します。

Step 1. 入力データを集める

データ

優先度

使い道

30分値デマンド

ピークカット・契約電力削減の精度向上

月間消費電力量

年間削減額・自家消費量の概算

電力料金プラン

基本料金・従量料金・燃調費・再エネ賦課金の反映

契約電力

基本料金削減の確認

営業時間・休日

負荷カーブ推定

屋根面積・方位角・傾斜角

発電量・搭載可能容量の確認

逆潮流条件

余剰可否・非FIT設計判断

補助金・予算

投資回収年数の確認

電気料金は基本料金、電力量料金、燃料費調整、再エネ賦課金などで構成されます。再エネ賦課金は使用電力量に応じて課金され、2026年度の単価は1kWhあたり4.18円、2026年5月検針分から2027年4月検針分まで適用とされています。(エネーチョウ)


Step 2. 比較ケースを作る

最低限、以下の4ケースを作ると説明しやすくなります。

ケース

狙い

見るべき指標

Case A:PV小さめ

余剰を抑える

自家消費率、余剰率

Case B:PV標準

電気代削減バランス

年間電気代削減額、回収年数

Case C:PV大きめ+蓄電池

CO₂削減・自家消費率向上

発電量、自家消費量、CO₂削減量

Case D:蓄電池ピークカット型

基本料金削減

最大デマンド、契約電力、基本料金削減


Step 3. エネがえるBizで比較するKPI

以下を比較します。

年間電気代削減額 自家消費率 余剰率 ピークカット量 CO₂削減量 投資回収年数 初期投資額 補助金反映後の実質負担額

計算の見方は以下です。

自家消費率 = 自家消費量 ÷ 太陽光発電量 余剰率 = 余剰売電量 ÷ 太陽光発電量 ピークカット量 = 導入前最大需要 − 導入後最大需要

Q7. 規模別の初期目安はありますか?

以下は、初回提案時の「当たり」を付けるための目安です。最終容量ではありません。

事業所規模

月間消費電力量

太陽光容量の初期目安

蓄電池容量の初期目安

小規模

〜5,000kWh/月

10〜30kW

10〜50kWh

中小規模

5,000〜15,000kWh/月

30〜100kW

50〜150kWh

中規模

15,000〜30,000kWh/月

100〜200kW

100〜300kWh

大規模

30,000〜70,000kWh/月

200〜500kW

300〜1,000kWh

超大型

70,000kWh/月〜

500kW〜1MW

1〜5MWh

この表は「初期の候補容量」を置くためのものです。実際の最適値は、30分デマンド、操業時間、休日、電力単価、屋根条件、逆潮流可否、補助金、蓄電池制御、BCP要件で変わります。


Q8. 30分値デマンドがない場合はどうすればよいですか?

30分値がない場合でも、初回提案は可能です。ただし、ピークカット効果の精度は落ちます。

データ不足時の進め方

不足データ

暫定対応

注意点

30分値なし

月間使用量+営業時間+業種別ロードカーブで仮説試算

ピークカット効果は仮説扱い

屋根図面なし

有効屋根面積から仮容量を置く

構造・荷重・離隔で後日修正

電力料金明細なし

想定プランで概算

最終提案前に必ず明細確認

契約電力不明

月間使用量から仮定

基本料金削減の判断は不可

逆潮流条件不明

逆潮流なし前提で保守的に設計

系統協議・小売条件の確認が必要

30分値なしの案件では、まず太陽光容量の当たりを付け、蓄電池は「余剰活用型」または「BCP型」の仮説に留めるのが安全です。ピークカット提案は、30分値取得後に再試算してください。


Q9. よくある失敗は何ですか?

失敗1:屋根に載るだけ載せる

屋根最大容量だけで設計すると、余剰が増え、自家消費率が下がることがあります。非FIT自家消費型では、まず昼間負荷に合う容量を置きます。

失敗2:蓄電池をkWhだけで決める

ピークカットでは、容量kWhだけでなく出力kWが重要です。大きな容量があっても、出力が足りなければピークを削れません。

失敗3:月間kWhだけでピークカットを語る

同じ月間使用量でも、負荷がなだらかな施設と、一瞬だけ大きなピークが立つ施設では、蓄電池の最適容量が変わります。

失敗4:回収年数だけで採用案を決める

工場・物流・医療・介護・食品・冷蔵冷凍施設では、BCP価値や操業停止リスクの低減も重要です。電気代削減だけでなく、事業継続価値を別枠で説明すると納得度が上がります。


Q10. お客様にはどう説明すればよいですか?

そのまま使える説明文です。

産業用自家消費型太陽光と蓄電池の最適容量は、単純に「屋根に何kW載るか」だけでは決まりません。
重要なのは、日中にどれだけ電気を使っているか、余剰電力がどれだけ出るか、最大デマンドを下げたいのか、停電時にどの設備を何時間動かしたいのかです。
そのため、まず簡易式で太陽光と蓄電池の候補容量を置き、エネがえるBizで複数ケースを比較します。
最終的には、年間電気代削減額、自家消費率、余剰率、ピークカット効果、投資回収年数、BCP効果を見て、目的に合う容量を選びます。


現場でのおすすめ手順

  1. 簡易式で当たりを付ける
    太陽光は昼間平均負荷×0.8〜1.2、蓄電池は目的別に初期容量を置く。

  2. エネがえるBizで複数ケースを作る
    PV小さめ、PV標準、PV大きめ、PV+蓄電池、ピークカット型、BCP型を比較する。

  3. KPIで判断する
    年間電気代、自家消費率、余剰率、ピークカット量、CO₂削減量、投資回収年数を見る。

  4. 最後は実データで詰める
    30分値デマンド、料金明細、屋根図面、逆潮流条件、補助金条件を反映して最終判断する。


まとめ

産業用自家消費型太陽光・蓄電池の容量設計は、以下の順番で考えると失敗しにくくなります。

目的を決める ↓ 昼間平均負荷から太陽光容量の当たりを付ける ↓ 余剰活用・ピークカット・BCPの目的別に蓄電池容量を置く ↓ エネがえるBizで複数ケースを比較する ↓ 余剰率・自家消費率・電気代削減額・回収年数・BCP効果で採用案を決める

最適容量は1つではありません。
電気代削減を最大化する容量、回収年数を短くする容量、CO₂削減を重視する容量、BCPを重視する容量は、それぞれ違います。だからこそ、1案で決め打ちせず、エネがえるBizで複数ケースを比較することが重要です。

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