結論
エネがえるASPでは、太陽光パネル容量や蓄電池容量の「最適容量」を自動算出する機能は提供していません。
ただし、以下の情報を入力することで、複数の容量パターンごとの導入効果を比較できます。
居住エリア
契約中または提案予定の電気料金プラン
最低1か月分、できれば12か月分の電力使用量
太陽光パネル容量
蓄電池メーカー・機種
売電単価
オール電化・EV・昼間在宅などの生活条件
実務上は、1つの容量を「正解」として出すよりも、複数の候補容量を比較するほうが、販売施工店の提案としては納得度が高くなります。
特におすすめは、以下の3案比較です。
提案案 | 位置づけ | 向いている顧客 |
S案 | 経済性重視 | 初期費用を抑えたい、回収年数を重視したい |
M案 | バランス重視 | 電気代削減・自家消費・停電対策をバランスよく見たい |
L案 | 停電対策重視 | 災害時の安心、夜間利用、非常用電源価値を重視したい |
1. 太陽光発電システム容量の考え方
太陽光容量は、基本的に以下の2つで考えます。
屋根に何kW載せられるか
年間使用量のうち、どこまで太陽光で賄いたいか
実務で使いやすい簡易式
推奨PV容量(kW) = 年間使用量(kWh/年) × 目標カバー率 ÷ 年間発電量原単位(kWh/kW・年)
目安値
項目 | 目安 |
年間発電量原単位 | 概ね 1,000〜1,300 kWh/kW・年 |
目標カバー率 | 60〜100% |
最終採用容量 | min(推奨PV容量, 屋根搭載可能容量) |
年間発電量原単位は、地域・方位・傾斜・日陰・積雪・パワコン効率・温度補正などで変わります。太陽光発電の経済性評価では、発電量、消費電力量、売電価格、設備容量などを組み合わせて評価する必要があります。(J-Stage)
2. 日中自家消費を重視する場合の太陽光容量
売電よりも自家消費を重視する場合は、年間使用量だけでなく、昼間にどれだけ電気を使うかを見る必要があります。
簡易式
昼間使用量(kWh/日) = 1日平均使用量 × 昼間比率
目安PV容量(kW) = 昼間使用量 ÷ 1kWあたり1日平均発電量
目安値
1kWあたり1日平均発電量 = 概ね 2.7〜3.6 kWh/kW・日
これは、年間発電量原単位 1,000〜1,300kWh/kW・年を365日で割った概算です。
例:
年間発電量原単位 1,100 kWh/kW・年の場合 1,100 ÷ 365 ≒ 3.0 kWh/kW・日
3. 蓄電池容量の考え方
蓄電池容量は、単純に「夜に使う電力量」だけでは決まりません。
実務では、以下の3つのうち、どれを重視するかで容量が変わります。
夜間に使いたい電力量
昼間に余る太陽光発電量
停電時に守りたい負荷
基本式
必要実効容量(kWh) = min(夜間使用量, 昼間余剰発電量, 停電時必要量)
ここでいう実効容量とは、蓄電池のカタログ上の定格容量ではなく、実際に利用できる容量のことです。
蓄電池は、定格容量すべてを毎回使い切れるわけではありません。放電深度、変換効率、制御仕様、安全マージンなどにより、実際に使える容量は定格容量より小さくなります。
そのため、定格容量は以下のように逆算します。
推奨蓄電池定格容量(kWh) = 必要実効容量 ÷(DoD × 往復効率)
用語の意味
用語 | 意味 | 目安 |
定格容量 | カタログ上の蓄電池容量 | 例:6.5kWh、9.8kWhなど |
実効容量 | 実際に使える容量 | 定格容量より小さい |
DoD | Depth of Discharge、放電深度 | 0.8〜0.9程度 |
往復効率 | 充電して放電するまでのエネルギー効率 | 0.85〜0.95程度 |
NRELは、蓄電池の往復効率を「充電されたエネルギーに対して、放電できるエネルギーの比率」と説明しており、自己放電や電気的損失を含む指標として扱われます。(NREL Docs)
計算例
必要実効容量:5kWh DoD:0.9 往復効率:0.9 推奨蓄電池定格容量 = 5 ÷(0.9 × 0.9) = 5 ÷ 0.81 ≒ 6.2kWh
つまり、夜間や停電時に実際に5kWh使いたい場合、カタログ定格では約6.2kWh以上が目安になります。
4. 代表的な3パターン
パターンA:太陽光のみを設置する場合
太陽光のみの場合は、まず以下を確認します。
屋根に何kW載るか
年間使用量はどれくらいか
昼間使用量は多いか少ないか
売電単価はいくらか
電気料金単価はいくらか
簡易式
推奨PV容量(kW) = 年間使用量(kWh/年) × 目標カバー率 ÷ 年間発電量原単位(kWh/kW・年)
実務上の見方
屋根が小さい場合:屋根搭載可能容量が上限
昼間使用量が多い場合:自家消費メリットが出やすい
昼間使用量が少ない場合:余剰売電が増えやすい
売電単価が低い場合:過積載より自家消費設計が重要
パターンB:太陽光+蓄電池を新設する場合
太陽光と蓄電池を同時に提案する場合は、先に太陽光容量を決め、その後に蓄電池容量を考えるのが実務的です。
手順
屋根搭載可能容量を確認する
年間使用量からPV容量の目安を出す
昼間余剰発電量を推計する
夜間使用量を確認する
停電時に守りたい家電・時間を確認する
蓄電池容量を複数案で比較する
蓄電池の基本式
必要実効容量(kWh) = min(夜間使用量, 昼間余剰発電量, 停電時必要量)
推奨蓄電池定格容量(kWh) = 必要実効容量 ÷(DoD × 往復効率)
実務上の注意
蓄電池容量を大きくしても、昼間に充電できる余剰太陽光が少なければ、十分に活用できない場合があります。
そのため、蓄電池は「大きければよい」ではなく、余剰発電量・夜間使用量・停電時ニーズのバランスで決める必要があります。
パターンC:既設太陽光に蓄電池を後付けする場合
既設太陽光に蓄電池を追加する場合は、特に以下が重要です。
卒FIT後かどうか
現在の売電単価
昼間の余剰発電量
夜間使用量
停電対策ニーズ
既設PCSとの接続方式
単機能型かハイブリッド型か
基本的な考え方
蓄電池で有効活用できる電力量 = min(昼間余剰発電量, 夜間使用量, 蓄電池実効容量)
卒FIT後などで売電単価が低い場合、余剰電力を売るよりも、蓄電して夜間に使うほうが経済的に有利になるケースがあります。
ただし、昼間余剰が少ない家庭では、大容量蓄電池を入れても毎日満充電できない可能性があります。
5. 現場でのおすすめ手順
販売施工店の営業現場では、以下の流れがおすすめです。
STEP1:使用量を確認する
最低1か月、できれば12か月分の電力使用量を確認します。
確認すべき情報:
月別使用量
昼間・夜間の使用傾向
オール電化かどうか
EV保有または導入予定
在宅時間
電気料金プラン
STEP2:屋根と設置条件を確認する
確認すべき情報:
屋根面積
方位
傾斜
日陰
積雪
パネル搭載可能容量
パワコン容量
既設設備の有無
STEP3:3案で提案する
1案だけではなく、以下の3案を作ると提案しやすくなります。
案 | コンセプト | 提案例 |
S案 | 経済性重視 | PV 4kW + 蓄電池なし、または小容量蓄電池 |
M案 | バランス重視 | PV 5〜6kW + 蓄電池 6〜8kWh |
L案 | 停電対策重視 | PV 6kW以上 + 蓄電池 9〜12kWh級 |
※上記はあくまで考え方の例です。実際には屋根条件、使用量、地域、料金プラン、機種仕様により変わります。
STEP4:エネがえるASPで比較する
エネがえるASPでは、候補容量ごとに以下を比較できます。
電気代削減額
売電収入
導入前後の光熱費
投資回収年数
CO₂削減量
複数料金プランでの差
太陽光容量別の差
蓄電池機種別の差
つまり、エネがえるASPは「最適容量を自動で決めるツール」ではなく、販売施工店が作成した候補案を、根拠付きで比較・説明するツールとして活用するのが実務的です。
6. よくある誤解
誤解1:日射量だけで太陽光容量を一意に決められる
これは不十分です。
太陽光容量は、日射量だけでなく以下の条件に左右されます。
屋根搭載可能容量
方位
傾斜
日陰
積雪
電気料金プラン
売電単価
昼間使用量
自家消費方針
蓄電池の有無
したがって、日射量だけで「最適容量」を決めるよりも、複数容量で経済効果を比較するほうが実務に合っています。
誤解2:夜間使用量に係数を掛ければ蓄電池容量が決まる
これも実務上は不十分です。
旧FAQでは、以下のような考え方が記載されていました。
蓄電池容量 = 夜間使用量 × 蓄電池寿命延長係数
しかし、この考え方は誤解を招きやすいです。
実務では、蓄電池容量を小さくするために係数を掛けるのではなく、まず必要実効容量を求め、そのうえでDoDと往復効率を踏まえて定格容量を逆算するほうが自然です。
推奨蓄電池定格容量 = 必要実効容量 ÷(DoD × 往復効率)
誤解3:蓄電池は大きいほどよい
必ずしもそうではありません。
蓄電池が大きくても、以下の条件に当てはまると活用率が下がります。
昼間余剰発電量が少ない
夜間使用量が少ない
停電時に守りたい負荷が少ない
電気料金の昼夜差が小さい
売電単価が比較的高い
蓄電池価格が高い
蓄電池は、充電できる余剰電力と放電して使う需要の両方があって初めて価値が出ます。
7. 顧客への説明トーク例
営業現場では、以下のように説明すると伝わりやすくなります。
太陽光と蓄電池の容量は、1つの正解があるわけではありません。
太陽光は「屋根に何kW載るか」と「年間使用量のどこまで賄いたいか」で考えます。
蓄電池は「夜に使う電気」「昼間に余る太陽光」「停電時に守りたい家電」の3つで考えます。
そのため、今回は経済性重視・バランス重視・停電対策重視の3案で比較し、削減額や回収年数を見ながら納得できる容量を選ぶのがおすすめです。
8. エネがえるASPでできること
エネがえるASPでは、以下の条件を入力して複数パターンの導入効果を比較できます。
居住エリア
電気料金プラン
電力使用量
太陽光容量
蓄電池機種
売電単価
オール電化条件
EV・V2H条件
導入費用
エネがえるASPは、最適容量そのものを自動算出するものではありません。
実務上は、販売施工店が現地条件や顧客要望を踏まえて作成した複数の候補案を、電気代削減額・売電収入・回収年数・CO₂削減量などで比較するための提案支援ツールとして使うのが適しています。
9. 参考情報・根拠URL
家庭用太陽光発電・蓄電システムの経済性評価では、電力需要、太陽光発電量、売電価格、設備容量などを組み合わせて評価する必要があります。
J-STAGE「電力データを用いた家庭用太陽光発電・蓄電システムの経済性評価」(J-Stage)経済産業省の定置用蓄電システム関連資料では、家庭用蓄電システムを含む定置用蓄電システムの普及、市場環境、価格、制度課題が整理されています。
経済産業省「蓄電システムをめぐる現状認識」(経済産業省)NRELは、蓄電池の往復効率を、充電したエネルギーに対して放電できるエネルギーの比率として説明しています。
NREL “Grid-Scale Battery Storage: Frequently Asked Questions” (NREL Docs)2024年度の定置用蓄電システム普及拡大検討会資料では、家庭用蓄電システムを含む定置用蓄電システムの現状認識が更新されています。
経済産業省「2024年度 定置用蓄電システム普及拡大検討会」資料(経済産業省)

